プロジェクト終結の極意|「楽しかった!」で次につなげる振り返り術
プロジェクトが終わると、みんなバラバラになって振り返りどころではない…
形だけの反省会になってしまい、次に活かされることがない…
終わったはずのプロジェクトから、後日問い合わせが来て対応に追われる…
プロジェクトという長い旅のゴールは、目的地に着くことだけではありません。無事に家に帰り着き、荷物を片付け、「次はどこに行こうか?」と笑顔で語り合えてこそ、その旅は本当に成功したと言えるのです。
今回は、プロジェクトを綺麗に完結させ、チームの経験値を最大化するための「プロジェクト終結」と「振り返り(事後検証)」の極意を、旅行の「帰宅後の片付けと思い出話」に例えて解説します。
プロジェクト終結とは「無事に家に帰り着くこと」
家族旅行で、目的地の発足を終えた後のシーンを想像してください。
- 不完全な終結: 帰りの車内でみんな疲れ果てて無言。家に着いたら荷物は玄関に放りっぱなし。数日後、カバンの中からカビた食べ残しや生乾きのタオルが出てきたり、玄関には泥だらけの靴が脱ぎ捨てられたままだったり……。
- 理想的な終結: 「あそこが一番楽しかったね」と語り合いながら帰り、荷物を整理して洗濯機を回す。かかった旅費を家計簿にまとめて整理し、撮った写真を共有して「次はもっとこうしよう」と約束する。
プロジェクトも同じです。成果物を納品して終わりではなく、「後片付け(事務的な手続き)」と「知恵の共有(事後検証)」を行って初めて、チームは次の旅へ出発できます。
失敗しないための「後片付け」3つのチェックリスト
プロジェクトを「終わったはずなのに終わっていない」状態にしないために、以下の3点は必ず実施しましょう。
成果物の引き渡しと承認
相手が受け取り、納得したことを確認して、正式にサイン(検収)をもらいます。「置いたから勝手に見て」では、後でトラブルになります。
- 旅行の例え: お土産を渡す。 留守番の家族にちゃんとお土産を手渡し、「ありがとう」と言われるまでが旅行です。
- よくある失敗例: システムを納品したが、正式な「完了報告書」の受領を後回しにしていた。数ヶ月後に「まだ終わっていないから追加修正して(もちろん無償で)」と言われ、断れなくなる。
リソースの解放
使っていたサーバーの解約、アカウントの削除、そして何より優先すべきは「メンバーを元の部署や次のプロジェクトへ戻す」手続きです。ダラダラと拘束し続けると、コストだけが増え続けます。
- 旅行の例え: レンタカーを返す。 荷物を降ろしたらすぐに返却しないと、追加料金が発生し続けてしまいます。
- よくある失敗例: 開発環境のクラウド利用料が課金され続けたり、手が空いているメンバーを「何かあったら困るから」と名簿に残したままに。結果、コストが予算を超過し、他プロジェクトの開始も遅らせてしまう。
ドキュメントの整理
「あの時、なぜこの判断をしたのか」という記録を、後任者が5分で探せる場所に保管します。
- 旅行の例え: 日記や家計簿をつける。 楽しかった記憶や使った金額を記録に残すことで、後で「あれはいくらだったっけ?」と困るのを防ぎます。
- よくある失敗例: 「当時の担当者がいないので分かりません」という最悪の回答。最終版の設計書や不具合対応の記録が個人のPCにしかなく、保守フェーズで数日かけて過去の経緯を調査するハメになる。
次回を10倍楽しくする「振り返り(KPT)」の知恵
プロジェクトの最大の資産は、完成したシステムではなく、「チームが得た経験」です。これを言語化するために、「KPT(ケプト)」というフレームワークを使った振り返りをおすすめします。
家族旅行の反省会に例えてみましょう。
Keep:良かったこと(次も続けたいこと)
- 例え: 「早朝に出発したのは渋滞回避に大正解だったね!」「あそこのお店の予約、お母さんナイス!」
- 実務: 「朝会での課題共有がスムーズだった」「自動テストを導入したおかげで終盤が楽だった」
Problem:悪かったこと(次への課題)
- 例え: 「お父さんが地図を読み間違えて1時間ロスした」「着替えが足りなくて現地で買った」
- 実務: 「要件定義の時間が足りず、手戻りが発生した」「レビューの依頼が直前すぎて、リーダーがパンクした」
Try:次に試したいこと(具体的なアクション)
- 例え: 「次はカーナビを最新に更新しておこう」「パッキングリストを共有アプリで作ろう」
- 実務: 「要件定義フェーズにあと2週間バッファを持たせよう」「レビュー依頼は3日前までというルールを作ろう」
振り返りは「犯人探し」ではない!
振り返りの最大の目的は「誰が悪いか」を特定することではなく、「仕組みをどう変えるか」に集中することです。
ダメな振り返り: 「お父さんが地図を読み間違えたのが悪い!(=個人を責める)」
良い振り返り: 「地図が古かったのが問題だ。次は最新のナビを入れよう(=仕組みの改善に繋げる)」
お父さんを責めても、次の旅行が楽しくなるわけではありません。失敗を「誰のせい?」ではなく「どのルールのせい?」と捉えるのが、プロフェッショナルな振り返りのコツです。
実践!KPTの進め方ステップ
振り返り(事後検証)を形だけで終わらせないための、具体的な手順です。
各自で書き出す(5〜10分)
まずは無記名でも構いません。付箋やチャットツールを使い、一人で「Keep」と「Problem」を書き出します。他人の意見に引きずられないことが重要です。
共有して整理する(15〜20分)
似た意見をグループ化しながら、全員で内容を確認します。「それは確かに良かったね」「その問題は深刻だったね」と共通認識を持ちます。
「Try」を導き出す(20〜30分)
ここが最も重要です。「Problem」を解決するため、あるいは「Keep」をさらに伸ばすための、明日からできる具体的な行動(Try)を決めます。
- 【旅行の例え:具体的な「対策」にする】
「次はもっと気をつける」という曖昧な反省ではなく、「出発の1時間前に、全員で持ち物リストを読み合わせる」といった具体的な行動に落とし込みます。 - 【実務のコツ:誰が・いつ・何をするか】
精神論ではなく、仕組みやルールに変換します。例:「レビュー依頼はSlackの専用チャンネルで行い、期限を明記する」
「解散式」こそがリーダーの最後の仕事
キックオフ(出発式)がエンジンの始動なら、プロジェクト完了時の「解散式(打ち上げ)」は、チームへのガソリン補給です。
「皆さんの頑張りのおかげで、この旅を乗り越えられました。ありがとう」
この一言があるかないかで、メンバーが次のプロジェクトに持ち込む熱量が大きく変わります。「このチームでまた仕事がしたい」と思ってもらえたなら、あなたはPMとして最高の成果を出したと言えるでしょう。
まとめ:旅の終わりは、新しい旅の始まり
全12回にわたり、プロジェクト管理を「家族旅行」に例えて解説してきました。
行き先を決め(目的)、しおりを作り(計画)、役割を分担し(体制)、雨に備え(リスク管理)、寄り道を調整し(変更管理)、無事に家へ帰る(終結)。
プロジェクトマネジメントは、決して難しい数式やツールを使いこなすことだけではありません。「誰かと一緒に、まだ見ぬ目的地へ、最高に楽しく、確実に辿り着くための技術」なのです。
さあ、あなたの次の「プロジェクトという名の旅」は、どこへ向かいますか? このシリーズが、あなたの旅路を照らす「しおり」の一助となれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました! これまでの連載記事は、こちらのインデックスからいつでも読み返せます。 【完全版】プロジェクト管理の基本を「旅行の例え」で学ぶ|全12回・初心者向け完全ガイド
