プロジェクトマネジメント

【やさしく解説】システム開発のプロジェクトマネジメントとは?身近な旅行で考えるプロジェクトマネジメント

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システム開発のプロジェクトとは?
プロジェクトマネジメントとは?

「プロジェクト」とか「プロジェクトマネジメント」と聞くと大規模な事業やシステム開発で出てくる用語と考えてしまいますが、もっと身近なもので例えると家族旅行も立派なプロジェクトです。
年に一度の家族旅行が成功で終わるか、それとも「行かなきゃよかった」と家族から不満が出るような失敗に終わるかは、それを計画するお父さんにかかっています。お父さんはしっかりマネジメントしなくては!

ここでは、家族旅行を題材に、プロジェクトマネジメントとは何かをわかりやすく解説します。

プロジェクトとは?

ウィキペディアで「プロジェクト」を検索してみると

プロジェクトマネジメント協会が制定しているPMBOK(第5版)の定義では、「プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務」とされている。

引用:ウィキペディア|プロジェクト

と記載されています。
プロジェクトとは「有期性のある業務」と解説されていますが、期限があるものがプロジェクトで、期限のない日常業務や活動はプロジェクトではありません。

また、Weblio 辞書では

 企画。計画事業。研究開発計画。

引用:Weblio 辞書|デジタル大辞泉|プロジェクト【project】

とも記載されており、ある目的を達成するための計画とも言えます。

つまり、プロジェクトとは「ある目的を達成するために期限を設けて実施する業務」ということです。

プロジェクトマネジメントとは?

こちらもウィキペディアで「プロジェクトマネジメント」を検索してみましょう。

プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトを成功に導くための総合的な管理手法のことで、スケジュール、人員、資金、物的資源などの管理を含む。

引用:ウィキペディア|プロジェクトマネジメント

ここで注目したいのは、「人員、資金、物的資源など」です。いわゆる「ヒト(人)・モノ(物)・カネ(金)」と言われるものです。「人員」がヒト、「物的資源」がモノ、「資金」がカネということですが、これらを管理していく必要があります。

システム開発の場合、開発要員が不足すれば開発スピードが落ちて納期が間に合わなくなりますし、開発するにはパソコンやサーバも必要です。当然、それらを準備するためには資金が必要になるわけです。
精鋭部隊を集めればプロジェクトは順調に進むかもしれませんが、そういった優秀な人材は費用も高くて予算に合わないことも多いです。

もう1つ重要なものとして「品質」があります。
予算を抑えるために単価の安い(経験の浅い)人材を揃えたり、無理して短納期で開発を進めたりすると、『出来上がったシステムをいよいよテストする段階にきたらバグだらけだった…』という事が無いように品質もしっかりと管理する必要があります。

これらの状況は日々の活動で常に変化していきます。時には悪い事態が発生することもあるでしょう。そのため、プロジェクトに関係する方々とは状況を共有し、問題が発生した時には一致団結して迅速に対応できるような関係性を築くことも必要です。

難しくなってきましたが、プロジェクトマネジメントとは「適正な資金=コスト(Cost)と適正な品質(Quality)で計画した納期(Delivery)を順守するため、プロジェクトの関係者全員で状況を共有しながらゴールに向かって進めること」と言えると思います。

家族旅行はプロジェクトなのか?

冒頭で「身近なもので例えると家族旅行も立派なプロジェクト」と記載しました。

家族旅行には予算(コスト)がありますし、日程(納期)を決める必要があります。それに向けて宿泊先を決めたり、行動予定を計画して日程に無理がないか検討(品質)する必要もあります。

日程によっては参加できない人も出てきますので家族全員で調整したり、どこに宿泊するか、何を食べるか、どこを観光するかなど、情報誌を見ればみるほど状況は変化していきます。

日々、家族全員で話し合いながら、楽しい旅行になるように団結して進めていくことは、まさにプロジェクトマネジメントです。

今回の家族旅行は次のような内容で進めていきます。

目的動物園と温泉に行き、楽しい思い出をつくる
旅行先北海道 ただし、札幌から行ける範囲とする
時期7月~8月 二泊三日とする
予算30万円
参加者家族3人(夫婦・子供一人)と妻の両親の合わせて5人

前提条件と制約条件をまとめよう

プロジェクトを計画するうえで考えないといけないものがあります。それは前提条件制約条件です。 旅行でも同じです。例えば、このようなものです。

前提条件

  • 家族全員が休める日にする
  • 旅行者が多い土曜日・日曜日は避ける
  • 2泊目に温泉地に行く
  • 妻は運転免許が無い(レンタカーは夫だけが運転) 

前提条件とは、計画通りに進めるために前提となってくる条件のことです。
実際のプロジェクトで発生するであろう事例を下記に記載します。

  • 現在の業務フロー図やマニュアルは存在しないため作成する必要がある
  • 対象業務に詳しい実務担当者をプロジェクトメンバーに入れる
  • 経理部門はプロジェクト兼務のため、1日の活動時間は3時間以内にする
  • 営業部門の業務はシステム化しない(現行のままとする)
  • 新システムの操作教育はお客様のキーマンのみとし、全社展開はお客様のキーマンが実施する
  • 新システムに合わせて業務を見直す(カスタマイズしない)

制約条件

  • 7月30日~31日は来客があるため自宅にいる必要がある
  • お祖母さんは足が悪いため長距離を歩けない
  • 商店街の景品でもらった旅行クーポンの期限が8月末で切れる

制約条件とは、外的要因によって発生し、変更できない条件のことです。プロジェクトに参画する関係者によって発生するもので、プロジェクト計画に制限がかかるようなものです。
こちらも事例を記載しておきます。

  • 現行システムで利用しているサーバの保守契約が2年後に切れる
  • 消費税率が変わる〇〇年〇〇月までにシステム改修する必要がある
  • データ連携先のシステムが再構築されるため、それまでに当社のシステムも改修する必要がある
  • データ連携先が多いため、サービス停止できるのは年末年始の3日だけで、その期間でデータ移行する必要がある
  • 会社が合併する〇〇年〇〇月までに新システムを導入する必要がある

問題が起こった時こそ、目的と背景が重要

プロジェクトには目的がありますが、往々にして手段と目的を間違えていることがあります。

家族旅行の場合を考えてみます。
今回の家族旅行の目的は「動物園と温泉に行き、楽しい思い出をつくる」です。北海道に二泊三日で旅行することは手段です。 動物園と温泉に行くのであれば北海道でなくてもいいし、一泊二日でもいいわけです。

もっと大事なのは「楽しい思い出をつくる」ことです。時間に余裕の無い計画を立てたことで、途中の渋滞で時間が無くなって動物園に行けず、それが原因で夫婦喧嘩するようなことがあってはいけません。

つまり、目的達成のためには手段はいくつもあり、状況が変わったら目的を見失わずに対処すればいいだけです。渋滞で予定が変わりそうなら動物園を最優先にして予定を見直すだけです。 目的が何か、それをプロジェクトの関係者全員で理解し、共有できていれば、問題が発生した時でも迷わず対処できるというわけです。

この時、目的の背景(なぜ旅行にいくのか)も明記しておくことで目的を見誤ることを防ぐことができます。

例えば、今回の旅行計画の背景が「お祖母さんの還暦祝いとして旅行を計画する」だったらどうでしょうか。

もし天気が大雨で動物園をあきらめたとしても、もともと還暦祝いの一環なので屋内レジャーに変えても問題ないですし、そもそも足の悪いお祖母さんには動物園は厳しいので、動物園の日は両親は別行動で札幌市内観光を楽しんでもらうことも考えられます。

システム化の背景を知ることで、お客様の視点で考えることができます。なぜこの業務改善(システム化)が必要なのか、お客様がかかえる業務課題やシステムの問題点、お客様の社外の環境変化などを書き出しておきます。

計画を立てるために環境を知る

もう1つ、プロジェクトを計画する前に知っておくべきことがあります。それは、プロジェクトを取り巻く環境です。

システム開発の場合、現在のシステムが稼働するサーバ環境はどうなっているか、開発環境とお客様にテストしてもらう環境は分ける必要があるのか、お客様とデータ連携している他社サーバ(連携サービス)はどれだけあるのか、稼働時間やメンテナンス時間(停止時間)などによって、プロジェクトの進め方が変わってきます。

家族旅行ではどうでしょうか。たとえば、次のようなこともあるでしょう。

例1)両親の自宅は最寄り駅が遠くて、本数の少ないバスを利用する必要がある(両親はマイカーを持っていない)

例2)マイカーは軽自動車で乗車は4人までが精いっぱい、全員分の荷物も乗らない

この場合、5人がゆったり乗れるレンタカーを事前に手配しておいて両親の自宅まで迎えに行く、あるいは両親にはタクシーに乗って最寄り駅まで来てもらうなど、計画も変わってくるわけです。

プロジェクトに期待する効果は?

事業活動としてプロジェクトを推進するからには目的達成時に期待する効果があるはずです。効果のない活動はあり得ません。

期待する効果を明確にすることで、投資に見合った効果なのか判断できますし、プロジェクトを推進する上での指標として評価できます。

期待する効果は、できるだけ定量的に書き出しましょう。
定性的な評価でもよいですが、曖昧な評価となるため注意しましょう。

  • 費用削減効果 月々〇〇万円の削減
  • 作業工数削減 営業部の人件費が月々〇〇万円の削減
  • 通信費用削減 FAX送信件数〇〇件廃止により毎月〇〇万円減
  • 業務効率向上 データ自動取込みにより受注インプット〇〇分削減

では、家族旅行の効果は何が考えられるでしょうか?
家族はもとより、両親にも喜んでもらえる。温泉で元気になってもらえる。もしかしたら、子供へのお年玉も増えるかも!?

いかがでしょうか。プロジェクトマネジメントが身近なものに感じたのではないでしょうか。

それでは、このプロジェクトを成功させるにはどうすればいいでしょうか?

それはプロジェクト計画を書くことです。次回は、プロジェクト計画の書き方をわかりやすく解説します。よろしければ次の記事もお読みください。

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メーカーに入社し、その後IT部門が分社独立、情報システムエンジニアとして30年以上勤務しています。これまで多くのプロジェクトに携わり、それらの経験から得た知見を覚え書きとして記録することで、厳しい現場で奮闘しているSEの皆さんの一助となれば幸いです。
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