技術手法解説

プレシデンスダイアグラム法(PDM:Precedence Diagram Method)

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プレシデンスダイアグラム法とは

ネットワーク図の一種で、アクティビティ(作業)の順序や依存関係を表した図のことです。関連するアクティビティ(作業)との間を線で繋げることで依存関係を表します。

ネットワーク図の種類

ネットワーク図には、プレシデンスダイアグラム法の他にPERTやクリティカルパス法(CPM)があります。作業を「アクティビティ」、マイルストーンを「イベント」と言いますが、アクティビティとイベントの表現方法には2種類あります。

AOA:アクティビティ・オン・アロー(activity on arrow)

丸印や四角形をノードと言います。ノードはイベントを表し、アクティビティ(作業)の矢印で繋げます。

AOAのネットワーク図はアローダイアグラムとも呼ばれます。

アクティビティと
イベントの扱い
矢印:アクティビティ(作業)
※点線はダミーと言い、所要期間がゼロのアクティビティです。
 下図では作業Aが完了していないと進めないことを意味します。
ノード(丸印や四角形):イベント
表し方
(図の例)

AON:アクティビティ・オン・ノード(activity on node)

ノードがアクティビティ(作業)になり、アクティビティを矢印で繋ぐことでアクティビティの前後関係を表します。

プレシデンスダイアグラム法はAONに該当し、アクティビティを丸印から四角形に変形したものになります。

アクティビティと
イベントの扱い
ノード(丸印や四角形):アクティビティ(作業)
矢印:アクティビティ間の前後関係
表し方
(図の例)

プレシデンスダイアグラム法の記号と表現方法

プレシデンスダイアグラムは、関連するアクティビティとの間を線で繋げることで依存関係を表し、次のアイテムで構成されています。

アイテム説明表し方
(図の例)
アクティビティ・ノード
作業を表します。
作業番号を記述します。
所要期間を日数で記述します。
マイルストーン
マイルストーンを表します。
作業ではないため所要期間はゼロです。
※マイルストーンとは制約条件になるようなイベントや決まっている予定や約束された期限などを指し、実作業ではないものです
並行関係
複数のアクティビティを同時に実施できる関係を指します。
並行関係のアクティビティは上下に並べて表記します。
前後関係
アクティビティを順に実施する関係を指します。
先行アクティビティから後続アクティビティを矢印で繋げます。
並行・前後関係
並行関係と前後関係を合わせた表記です。
この例の場合、先行する2つのアクティビティが完了すれば後続アクティビティを実行できます。

ネットワーク図の階層化と親子関係

プロジェクトの規模が大きくなれば、ネットワーク図も階層化して複数作成します。

最上位のネットワーク図はプロジェクトのマイルストーンをまとめて作成し、そこからブレイクダウンしてアクティビティを分解した下位のネットワーク図を作成します。

下位のネットワーク図と上位のネットワーク図は親子関係になり、子のネットワーク図にあるアクティビティを全て完了すれば親のネットワーク図のマイルストーンが完了する状態になります。

4つの依存関係

上述の通り、アクティビティの依存関係のパターンには並行関係前後関係があります。

また、前後関係はさらに4つの依存関係があります。

依存関係のパターンパターン事例
終了ー開始:FS(Finish-to-Start)
作業Aが終了しないと、作業Bを開始できない。
(一番多いパターン)
例)要件定義が終了しないと設計が開始できない。
開始ー開始 SS(Start-to-Start)
作業Aが開始されるまで、作業Bが開始できない。
例)画面設計が開始されないとテーブル項目定義は開始できない。
終了ー終了 FF(Finish-to-Finish)
作業Aが終了しないと、作業Bを終了できない。
例)テストが全て終了しないと開発完了の品質検査は終了しない。
開始ー終了 SF(Start-to-Finish)
作業Aが開始されるまで、作業Bを終了できない。
例)新システムがサービス開始するまで旧サービスのバッチ処理は終了できない。

このように、プレシデンスダイアグラムは4つの依存関係を表現できますが、これはAON(アクティビティ・オン・ノード)だからとも言えます。

同じネットワーク図でも、AOA(アクティビティ・オン・アロー)は矢印がアクティビティになるため「終了ー開始」パターンしか表現できません

リードとラグ

アクティビティを開始するタイミングによってリードラグが発生します。

リードとは、先行するアクティビティが終了する前に後続アクティビティの開始を繰り上げる時間のことです。後続アクティビティを開始する時には準備時間が必要な場合、その時間分をリードとして設定します。(下図の番号3)

逆に、先行アクティビティが終了しても後続アクティビティの開始を遅らせる時間ラグと言います。例えば、機器を発注して納品待ちのような場合、発注アクティビティ(番号1)の後続(番号2)は納品されるまでラグが発生するでしょう。

リードとラグのイメージ図
リードとラグのイメージ図

クリティカルパス

プロジェクトの最初の作業から最後の作業までを繋ぐ経路は、作業の依存関係によって複数の経路ができます。その経路のうち、所要期間が最も長くなる経路のことをクリティカルパスと言います。

クリティカルパスの作業はいずれも余裕がなく繋がっています。作業Aが終了後すぐに作業Bを開始し、作業Bが終了後も間を空けずに作業Cを開始するという具合です。

そのため、クリティカルパス上の作業が1つでも遅れると、プロジェクト全体の進捗に影響することになります。まさに、非常に重要(クリティカル)な経路(パス)というわけです。

クリティカルパスの求め方はこちらで解説しています。あわせてお読みください。

プレシデンスダイアグラム法の目的

それぞれのアクティビティの依存関係を明確にし、最適な順序にアクティビティを並べることが目的です。

プロジェクトの開始から終了までのアクティビティを書き出した管理資料をWBSと言いますが、WBSはアクティビティを階層で書き出したもので、依存関係まではわかりません。

依存関係がシンプルな小規模プロジェクトであればWBSだけでも問題ないかもしれません。ですが、どんなプロジェクトでも、なにかしらアクティビティ間には依存関係があり、守らなければいけない順序があるはずです。

プレシデンスダイアグラム法を利用すれば、それぞれのアクティビティの依存関係を明確にすることができ、最適な順番でアクティビティを進めることができます

もし、あなたのプロジェクトのアクティビティが100以上ある場合、頭の中だけで依存関係を考慮して順序づけするのが難しいことは容易に想像できるのではないでしょうか。

プレシデンスダイアグラム法で気をつけること

プレシデンスダイアグラム法でネットワーク図を書くときに、気をつけておきたい点を列挙します。

  • 時間の経過を表現するために左から右にアクティビティを繋げること
  • 依存関係のあるアクティビティ間のみ矢印を繋げること
  • プロジェクト開始の箱で始まり、プロジェクト終了の箱で終わること
  • ネットワーク図の全アクティビティが完了すればプロジェクトの目的が達成できること
  • WBSとネットワーク図の整合性が取れていること(作業の分解レベル、階層レベルが等しい)

スケジュールの立て方について、こちらでスケジュール完成までの6つのステップを解説しています。スケジュール作成に不安のある方はあわせてお読みください。

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メーカーに入社し、その後IT部門が分社独立、情報システムエンジニアとして30年以上勤務しています。これまで多くのプロジェクトに携わり、それらの経験から得た知見を覚え書きとして記録することで、厳しい現場で奮闘しているSEの皆さんの一助となれば幸いです。