「プロジェクトが始まったけど、いつまでに何人集めればいいのかわからない……」
「人が足りなくて現場が疲弊しているが、追加で何人補充すべきか根拠が示せない」

プロジェクトを完遂するために最も重要なリソースは「人」です。しかし、優秀なエンジニアをただ集めれば良いわけではありません。

必要な時期に必要なスキルを持つ人を、予算の範囲内で適切に配置する「要員計画(人的リソース計画)」がなければ、コストの超過やスキルのミスマッチによる遅延を招いてしまいます。

今回は、プロジェクトにおける要員計画の定義、なぜ計画が必要なのか、戦略的な要員配置を成功させるポイントを解説します。

要員計画(人的リソース計画)とは

プロジェクトにおける「要員計画」とは、プロジェクトの各工程(フェーズ)において、どのようなスキルを持った人が、どのタイミングで、何人必要かを具体的に算定し、確保するための計画です。

前述の「会議体」で決定したコミュニケーションルールを円滑に運用するためにも、適切な人員配置は欠かせません。また、要員計画はリソースのうち、特に「人的な調達と割り当て」に焦点を当てた活動を指します。

要員計画で決定すべき主な要素:

  • 役割(ロール): PM、PL、アーキテクト、開発者、テスターなど。
  • 工数(人月): 各工程で必要となる労働量の合計。
  • 期間: いつ参画し、いつ離脱(リリース)するか。
  • スキル要件: 必要な言語、業務知識、経験年数など。

なぜ要員計画が必要なのか

「忙しくなったらその都度人を増やせばいい」という考え方は危険です。計画的な要員確保が必要な理由は主に3つあります。

予算(コスト)の裏付けにするため

プロジェクト費用の大部分は「人件費」です。要員計画が曖昧だと、見積もりの根拠が崩れ、プロジェクトが赤字になるリスクが高まります。

リードタイムを考慮するため

必要なスキルを持った人材が、明日からすぐに動けるとは限りません。採用や社内調整、外部ベンダーへの発注には数週間から数ヶ月の「リードタイム」がかかるため、先読みした計画が不可欠です。

チームの立ち立ち上げ(オンボーディング)時間を確保するため

新しく入ったメンバーが即戦力として動くには、プロジェクトのルールや仕様を理解する期間が必要です。要員計画では、この「立ち上がり期間」も考慮した配置が求められます。

要員計画を立てる・見直す際のポイント

要員計画は一度立てて終わりではなく、プロジェクトの進展に合わせて精度を高めていくことが不可欠です。主要な3つのポイントを解説します。

① フェーズに合わせた「段階的な詳細化」

プロジェクトの初期段階は、まだ「何を作るか」の細部が決まっていないため、どうしても見積もりの精度に限界があります。そのため、まずは「最初は不確実なものである」という前提に立ち、リスクを見込んだ計画を立てることが重要です。

  • プロジェクト立ち上げ時:【精度:低】
    過去の類似案件に基づき、「概算(±50%程度の誤差)」で算出します。この段階では、予期せぬトラブルや仕様の膨らみを考慮し、あらかじめ一定のリスク(バッファ)を織り込んで予算枠を確保します。
  • 要件定義完了後:【精度:中】
    「何を作るか」が確定し、不透明な部分が減った段階で、工数を「精査(±15%程度の誤差)」ます。具体的なスキルセットを定義し、本格的なアサインを開始します。
  • 設計完了・開発着手時:【精度:高】
    タスクが細かく分解された段階で、個々のメンバーの稼働を「確定(±5%程度の誤差)」させます。

このように、情報の増加に合わせて計画をアップデートし、誤差を縮めていくプロセスがプロジェクトの安定につながります。

② 山積み表(リソースヒストグラム)による可視化

工程ごとに必要な人数を月別や週別で積み上げたグラフ(山積み表)を作成し、視覚的に管理します。

山積み表のイメージ例

山積み表から判断すべきポイント:

  • 平準化ライン(リソース・レベリング): グラフ上の点線は、チームが無理・無駄なく稼働できる基準線です。PMはこのラインに沿って要員の増減を抑えることで、採用や教育コストの最適化を図ります。
  • 「山」が高すぎる時期(過負荷): グラフが平準化ラインを突き抜けている場合、メンバーが物理的に対応不可能な業務量を抱えています。作業を前後にずらすか、他チームからの増員が必要です。
  • 「谷」が深い時期(アイドル): グラフがラインより極端に低い時期は、人員の手が空いてしまっています。他プロジェクトへの応援や、次工程の前倒し作業を割り当ててコストの無駄を省きます。

③ スキルマトリクスと体制図の連動

必要な「役割」に対して、どのような「スキル」が必要かを整理し、体制図と連動させます。

  • スキル要件の明確化: 「Java経験3年以上」「要件定義の経験者」など、具体的な条件を定義してミスマッチを防ぎます。
  • 体制図へのアサイン: 体制図の各ボックスに名前を当てはめ、同時に急な離脱に備えたバックアップや工数の余裕(バッファ)を検討します。

それぞれの職務と役割(要員計画視点)

要員計画において、誰がどのような責任を持つべきかを整理します。

お客様側の主な役割

  • プロジェクト統括責任者: 全体予算の承認、自社側の要員(業務担当者など)の確保・調整。
  • プロジェクトマネージャー: プロジェクト全体の必要工数の承認、重要局面での増員判断。
  • プロジェクトリーダー: 担当範囲で必要な業務知識を持つ要員の選定、受け入れ準備。

システム開発側の主な役割

  • プロジェクトマネージャー: 要員計画の策定、社内リソース調整、外部ベンダーへの発注依頼。
  • プロジェクトリーダー: 各工程の詳細な必要工数(人月)の算出、メンバーのスキル評価。
  • 品質保証責任者: 計画された要員構成が, 品質目標を達成するのに十分かのレビュー。

まとめ:要員計画はプロジェクトの「体力」を決める

要員計画は、プロジェクトを最後まで走り抜くための「体力」を整える作業です。多すぎればコストが膨らみ、少なすぎれば現場が倒れてしまいます。

今回のポイント:

  • 「いつ・誰が・何人」必要かを山積み表で可視化する。
  • 工程が進むごとに計画を「再見積もり」し、精度を高める。
  • リードタイムを計算に入れて早めに動く。

適切な要員計画を立てることで、メンバーが無理なく、かつ最大限に力を発揮できる環境を整えましょう。

次回は、外部パートナーとの協力体制を最適化する「委託先管理」について解説します。ぜひ併せてお読みください。

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