システム開発のプロジェクトマネージャーを任命されたけど、コミュニケーション計画はどうすればいいの?
そもそもコミュニケーション計画ってなに?
コミュニケーション計画のやり方がわからない?
プロジェクトにおけるコミュニケーション計画の目的は、ステークホルダーとのコミュニケーション方法を決めて合意形成を図り、プロジェクト運営を円滑に進めていくことです。
そのためにはコミュニケーションの場となる会議を計画的に実施する必要があります。しかし、お客様が忙しいことを理由に会議に参加しない、お客様との仕様調整でギクシャクして予定通りに進まない、チームメンバーの仲が悪くて会議の雰囲気が悪い、等ではプロジェクトは進みません。
今回は、プロジェクトにおけるコミュニケーション計画(会議体)とは何か?プロジェクト計画に記載すべき会議体の種類とポイントをわかりやすく解説します。
前回のおさらい(プロジェクト計画の書き方)
これまで、プロジェクトを成功させるためにプロジェクト計画を立てること、そしてプロジェクト計画の最初は「プロジェクト概要」をまとめることを解説しました。
プロジェクト概要がまとまったら、次はプロジェクト計画を詳細に落とし込んでいきます。プロジェクト計画でやるべきことは、そのプロジェクト概要を含めて11項目あります。
これらはプロジェクトを円滑に運営するための重要なガイドと言えるものです。この11項目をプロジェクト計画書にまとめ上げ、ゴールに向かってプロジェクトをスタートしましょう。
今回は、コミュニケーション計画(会議体)を解説します。
プロジェクトにおけるコミュニケーション計画とは?
コミュニケーション計画の目的は、プロジェクトに参画するすべての方(ステークホルダー)とのコミュニケーション方法を決めて合意形成を図り、プロジェクト運営を円滑に進めていくことです。
当たり前ですが、プロジェクトはひとりが頑張っても進みません。多くの関係者が携わり、1つの目標に向かって進んで行く必要があります。ですが、その過程でいくつもの課題や欠陥、予定を変更せざるを得ない出来事が必ず発生します。そのため、関係者でコミュニケーションを取って解決しながら合意形成することが重要になります。
また、定期的にプロジェクトのオーナーや責任者に対して進捗状況を報告したり、重要事項の討議や意思決定を図っていく必要もあります。ステークホルダーに向けて、今後どのような会議があり、誰が参加する必要があるのかを計画段階で周知徹底することで、各自のスケジュールを割り当ててもらうと同時にプロジェクトへの参加意識を高めることにもつながります。
特にお客様が参加する会議は、参加メンバーや日程を勝手に決める訳にはいきませんので、お客様と相談して合意のうえで進めていきましょう。
では、どのような会議を計画すればいいのでしょうか?
システム開発のプロジェクトで行う会議体は主に2種類あります。それは、「お客様との会議体」と「システム開発会社内の会議体」です。
お客様との会議体の種類
お客様と実施する会議体はいくつかあります。それぞれのポイントをまとめます。
キックオフ
プロジェクトの背景や目的、最終的なゴール等、プロジェクトの計画をステークホルダーで共有して合意を得ることが会議の目的です。
この会議ではプロジェクト計画書をベースに主に下記の内容を説明します。
- プロジェクトの背景や目的、最終的なゴール(どうなれば成功か)
- プロジェクトのスコープ(システム化の対象範囲や対象業務など)
- プロジェクト全体のスケジュール プロジェクトの体制と役割分担
- プロジェクト運営のルール(変更管理、欠陥管理、課題管理)
- プロジェクトの会議体
ステアリングコミッティ
プロジェクトの進行上、意思決定を図る必要があるポイントで行う会議です。
意思決定が目的ですので、必ず判断できる方を会議メンバーに加える必要があります。 主な開催ポイントは下記になります。
- キックオフ(これもステアリングコミッティのひとつです)
- 各工程の完了時点(要件定義後、システムテスト後、運用テスト後)
- 品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)を順守できない課題が発生した時
- ステークホルダーとの間で対立状態(コンフリクト)が発生した時
進捗報告会
プロジェクトの進捗状況や新たに発生した課題、要件・仕様の変更事項など、お客様とプロジェクトの進行状況を共有することが目的です。
より上位への意思決定を図る必要がある場合は、ステアリングコミッティを開催する必要があります。 主な共有事項は下記になります。
- プロジェクトの進行状況(全体スケジュールの進行度合い、WBS達成状況)
- 新たに発生した課題事項と解決に向けた対策、および結果(状況)
- お客様の要件変更やシステム仕様変更とその承認状況
仕様確認会議
システム開発において、お客様から要件を聞き出して、どのようなシステムを必要としているのか整理することが一番難しいことだと認識しています。お客様はすべてを説明することはありません。打ち合わせを繰り返し行うことで、現在の業務を理解し、問題を洗い出して、それを解決できるシステムを考えることが重要です。
そのため、日常業務で忙しいお客様にお時間をいただくためにプロジェクト計画時点で本会議の開催を説明し、あらかじめ予定を組んでいただくことが必要です。
要件定義は週2回、外部設計(ユーザーインターフェース設計)は週1回を目安に開催スケジュールを決めてお客様と共有しましょう。
また、要件・仕様が決まらない場合は、お客様・開発会社ともに、より上位の責任者に参加いただいて早期解決を図りましょう。
- お客様が作成した資料の確認(主に要件定義)
- 開発会社が作成した画面や帳票の仕様書のレビュー
- 前回の宿題の報告、既存課題の状況報告
- 次回の予定、参加者の確認、宿題と担当分け
まとめ(参加者・開催時期・頻度)
各会議体の概要、開催時期や頻度、主催者と参加者についてまとめます。
会議体名 | 概要 | 開催時期(頻度) | 主催者 | 参加者 |
キックオフ | プロジェクトを開始する前に行う会議 | プロジェクト開始時 | プロジェクトマネージャー | 全員 |
ステアリングコミッティ | 意思決定を行う必要がある時に行う会議 | ・各工程の完了時点(要件定義後、システムテスト後、運用テスト後) ・品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)を順守できない課題が発生した時 |
プロジェクトマネージャー | お客様と開発会社の責任者、PM、必要と判断した関係者 |
進捗報告会 | プロジェクトの進行状況や課題などを共有、検討する会議 ※開催時期はお客様と要相談 |
毎月、毎週等、定期的に開催 ※重要課題が発生時は随時開催 |
プロジェクトマネージャー | お客様と開発会社の責任者、PM、必要と判断した関係者 |
仕様確認会議 | 要件定義や外部設計などの仕様を確認する会議 | 要件定義中は週2回、外部設計中は週1回 | プロジェクトマネージャー | お客様と開発会社の責任者、PM、必要と判断した関係者 |
システム開発会社内の会議体の種類
各開発工程の完了判定会議
設計や開発、テストの各工程の完了時点で行うことで、プロジェクトで重要な品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)を順守できているか判定することが目的です。
完了した工程の品質状況や課題と解決策を共有することで、次の工程に進んでも問題ないかを判断します。例えば、関連業務間で仕様の整合ができていなかったり、課題が山積していて対策も出来ていない状態では次の工程には進めません。そこまで酷い状態でなくても、曖昧な仕様や未解決の課題が残っている状況では手戻りする可能性が高くなり、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)に少なからず影響してきます。
この会議では、プロジェクトの責任者やプロジェクトマネージャー自らが冷静に状況を判断し、間違った方向に進まないように軌道修正する場にしなければなりません。現工程の失敗は全員で反省し、次の工程に生かすプロジェクト運営ができれば成功も近づいてくるでしょう。
- 現工程の完了状況と次工程の準備状況
- スケジュール(WBS)の状況、遅延の場合はその対策と結果(状況)
- 現工程で作成した成果物の状況(主に品質面)
- 課題の状況(残課題とその解決策の共有)
- 要件や仕様変更の共有(関連するサブシステム間の影響確認)
チーム定例会議(進捗会議)
プロジェクトの体制でチーム分けしますが、その単位で進捗状況の確認を行います。主な目的は進捗状況の確認や課題と対策検討になりますが、チーム内のコミュニケーションを活性化させることも目的です。少なくとも週1回は開催することを計画し、状況によって開催頻度を調整していきましょう。
この会議が明るく活気のある雰囲気となるかは、チームリーダーの腕の見せ所です。ミスや遅れを責めるのではなく、どうすればミスを防止できるか、遅れを軌道修正できるかを、全員が知恵を出し合って協力し合えるチームにしたいものです。
- 各メンバーのWBSの状況、遅延の場合はその対策の検討
- 前回の宿題の報告、既存課題の状況報告
- 新たな課題の共有と対策の検討(場合により体制強化も検討)
- チーム運営上の課題共有と対策の検討
- 次週の予定の共有、宿題と担当分け
委託先との定例会議(進捗会議)
システム開発の外部委託先がある場合は、委託している作業の進捗も確認する必要があります。予定通りに納品されればよいのですが、納期直前になって納品が遅れることが発覚することがあればマネジメント失敗です。
チーム内の進捗会議と同様に、委託先とも定期的に会議を行って進捗を確認しましょう。
- スケジュール(WBS)の状況、遅延の場合はその対策と結果(状況)
- 前回の宿題の報告、既存課題の状況報告
- 新たな課題の共有と対策の検討
- 次週の予定の共有、宿題と担当分け
まとめ(参加者・開催時期・頻度)
各会議体の概要、開催時期や頻度、主催者と参加者についてまとめます。
会議体名 | 概要 | 開催時期(頻度) | 主催者 | 参加者 |
各開発工程の完了判定会議 | 各工程の完了時点で行う会議 | 各工程の終了時点 | プロジェクトマネージャー | 開発会社の責任者、PM、必要と判断した関係者 |
チーム定例会議(進捗会議) | チーム単位で進捗確認を行う会議 | 毎週1回 ※重要課題が発生時は随時開催 |
チームリーダー | 開発会社のチームリーダー、メンバー |
委託先との定例会議(進捗会議) | 外部委託先と進捗確認を行う会議 | 毎週1回 ※重要課題が発生時は随時開催 |
プロジェクトマネージャー | 開発会社、委託会社の責任者、PM、必要と判断した関係者 |
コミュニケーション計画を共有し、プロジェクトを円滑に運営しよう
繰り返しになりますが、コミュニケーション計画の目的は、ステークホルダーとのコミュニケーション方法を決めて合意形成を図り、プロジェクト運営を円滑に進めていくことです。
せっかく会議体を決めても、お客様が忙しいことを理由に会議に参加しない、お客様との仕様調整でギクシャクして予定通りに進まない、チームメンバーの仲が悪くて会議の雰囲気が悪い、等ではプロジェクトは進みません。いかにプロジェクト計画時点でお客様を含めたステークホルダー全員をやる気にさせるかも重要なポイントです。
出来るだけ早いタイミングでステークホルダーとコミュニケーション計画を共有し、会議を欠席することがないように段取りしてプロジェクトを円滑に運営しましょう。
コミュニケーション計画(会議体)の解説はこれで終わりです。
引き続き、プロジェクト計画でやるべき11項目のガイドを解説します。これらをプロジェクト計画書にまとめ上げ、ゴールに向かってプロジェクトをスタートしましょう。
次回は要員計画について解説します。よろしければ次の記事もお読みください。